[コラム]マストドンがポスト・Twitterになれない理由

最近話題の新興SNS、マストドンについて、少し考えています。

随所でいわれている通り非常に面白いシステムだと思いますし、やり方次第で今後かなりの発展が見込める期待の新星といった存在感は見事の一言に尽きます。

とはいえ仕組みが似ていることから「ポスト・Twitter」と表現したニュースが多く、流行りに乗って今からでも”つぶやき先”を変えてみるべきか?と思うかもしれませんが、ちょっと現段階でそれは早すぎるというのが最初の感想です。

マストドンの魅力──何がそんなに凄いのか?

サービスの仕組みやTwitterと似ているところなどは随所で扱われているのでここでは飛ばします。一応Wikipediaへのリンクを貼っておきます。

マストドンの面白いポイントは、誰でもサーバーが建てられるところです。これを「インスタンス」と呼び、ユーザーは好きなインスタンスを選んで所属することで利用を開始します。

ここでちょっと思ったんだけど、インスタンスじゃなくてサークルって呼ぶようにしとけばもっとすんなり馴染んだんじゃないかなと思います。

現在大規模なインスタンスはPixivやniconicoが建てており、この傾向は今後拡大するでしょう。とするなら、インスタンスとはそのまんま「同じ趣味嗜好を持った人の集まる場」になっていくはずです。

個人的予測:ソシャゲが食いつけばマストドン人気は爆発する

たとえばモンストのようなマルチプレイに対応したゲームが専用のインスタンスを設置して、そこにトゥート(=Twitterでいうツイート、投稿のこと)する形式でマルチプレイの募集ができるようになったらどうでしょうか。

LINEよりも気軽にフォローできる匿名性、掲示板としても機能するタイムラインの相乗効果で「公式マルチ募集掲示板」が出来上がるはずです。それも不特定多数に向けた公開トゥートだけでなく、メンションも使えるので特定のメンバーで(しかも、お互い匿名のままで)グループを作ることも可能でしょう。

まだTwitterのリストにあたる機能がないかもしれませんが、そもそもフォローした人のトゥートを流すホームタブがありますし、よく一緒になる人はフォローしておけば対応できるかと思います。

モンストの場合マッチまで自動で進めてくれるAPIがあるのでわかりませんが、もうちょっと小規模で公式が大がかりな掲示板を持てないようなところも参入しやすいんじゃないかなと思います。

リモートフォローで遊び分けもできそう


※下記ニュース記事で公開されているITmedia NEWSのマストドンアカウントです。

ITmedia NEWSアカウントは「mstdn.jp」インスタンスにあります。一方で、自分のアカウントがniconicoのインスタンスである「friends.nico」にある場合も、インスタンスを横断してフォローが可能です。

こうすると自分のタイムラインにフォローしたアカウントのトゥートが流れてきます。

これをソシャゲのサービスにあてはめると、

  • 今日はモンストの募集が盛んだからそっちに参加
  • 明日は特定のフォロワーとパズドラをやる約束をしている
  • ちょっと手が空いたタイミングでグラブルの誘いが来た

これを全て1枚のSNSページ(マストドンのタイムライン)で管理できる可能性がある、と考えています。
※上記全てのゲームがそれぞれ個別に公式のマストドンインスタンスを設置した場合。

大きめのタイトルばかり並べてしまいましたが、先述の通り公式が掲示板を用意できない規模のゲームであったとしても、マストドンのソースコードはGitHubで公開されています。

多くのゲームがマストドンでのマルチプレイ募集を採用すれば、あっちのゲームのマルチ募集掲示板を開き、こっちのゲームでLINEグループを開き……といった手間がなくなるぶん、快適に遊べるようになるんじゃないでしょうか。

同時にサービス側としても、ゲーム内に専用掲示板を設ける等のリソースを割く必要がなくなり、アドホックとマストドンインスタンスだけ用意しておけばマルチプレイが実装できるとなればやりやすいんじゃないでしょうか。

素人考えですけどネ。

果たしてLINEほどのフットワークを実現できるかなど、いくつかの課題も見えますが、期待は大きいと思います。

実際ゲーム系マストドンインスタンスは既にある


ソシャゲだけに限りませんが、既にいくつかの著名なタイトルの名を冠したマストドンインスタンスを確認しています。

※ただし公式が立ち上げたのか有志が立ち上げたのかまでは調べていません。

まずはFF14のマストドンインスタンス↓

そしてグラブル(グランブルーファンタジー)のマストドンインスタンス↓

アイマス(アイドルマスター)のマストドンインスタンス↓

東方Projectのマストドンインスタンス↓

などです。

マストドンがTwitterを飲み込むことは絶対にない、その理由

あくまで個人の予想ですが、マストドンがこの先流行る可能性はかなり高いと思っています。

しかし、どれほど栄えようとTwitterのユーザーを奪い去ることは絶対にないとも思っています。

その根拠は主に以下のようになります。

  • SNSを乗り換えるのはそう簡単な話じゃない
    • そもそもこういう話題が出た時、誰もあの話を思い出さないのでしょうか?
      iPhoneからAndroidに移行するときにパズドラのゲームデータをどうするのか、といった、いわゆる「互換性」に関する問題。Twitterとマストドンも同じ問題を抱えることになり、そしてマストドンはこの問題を解消できないと思います。その根拠を以下に示します。
  • 過去のトーク(ツイート)履歴やTwitter側のフォロワーを引き継げない
    • Twitterとマストドンが別サービスである以上、同じユーザー名(@Tom_And_Kery など)が存在してもそれは同一人物ではない可能性が残ることになります。匿名SNSでこの可能性を持ったまま数百~数万のフォロワーを移動できると思いますか?
  • OpenIDによる利便性をマストドンはまだ持たない
    • いわゆる「Twitter IDでログイン」というやつ。全く関係ないウェブサービスにアカウントを作る時、メールアドレスとパスワードを新規登録するかわりに自分のSNSアカウントを連携させるものです。
      マストドンにこの機能がないというだけでなく、この機能を持たせてもTwitterに紐付けたサービスを切り替える必要性がないということも重要です。両立はするでしょうが移行はありえません。
  • 拡散性をマストドンは持っていない
    • 今やどんなウェブサイトでも見かけることがある「ツイートボタン」、これと同じものをマストドンは作る必要があります。もちろんただ作るだけでなく、現在Twitterボタンを置いている全てのサイトにマストドンのボタンを導入してもらう必要もあります。
  • Twitterの持つ大きなアドバンテージはサードパーティアプリの豊富さ
    • これはFacebookすら真似できない規模で展開されているTwitterの強みです。マストドンがどこまで追従するかはわかりません。

以上の理由から、Twitterとマストドンは共存することはあってもどちらか一方に集中することは極めて困難だと思います。

また、マストドンが仮にこれらの問題をすべてクリアーしても、最後に待つ関門がとても大きいです。

それは、メッセージのやりとりだけならユーザーははっきり言って「何でもいい」と思っている、ということです。

サービス選びの決め手は人によって様々です。UIが気に入ったとか、面白い機能を持っているとか、スタンプがかわいいとか。

ただ、おそらくほとんどの人に共通する基準もやっぱりあると思うんですよね。

その基準が「まわりの皆がやっている」になるはずです。そもそも友達がいなければはじめる意味があまりありませんし。
(Twitterのようにつぶやき専用として使うならいいけど、それならそもそもTwitterだけでよくね?って話でもあります)

一定条件下であれば国際通話まで無料になるなど、数々のアドバンテージを持つハングアウトが国内でどれほど利用されているか、考えてみてください。極端な話ではありますが、サービスが流行るのに機能や性能はあまり関係がないんです。ましてそれが相手ありきの双方向コミュニケーションツールだとするなら尚更です。

友達皆がやってて、ふとした時に何でもない話題を投稿し、あるいはやりとりするだけなら、プラットフォームは問わない。

皆がやっているか?(=つまり、そのサービスで目的の人にメッセージを送れるか?)

というのがメッセンジャーの絶対条件であり、大正義となるわけです。加えてそれが「一度始めたらやめられない」根拠ともなるのだから、ここに食い込むことは容易ではないはずです。

既にLINEで繋がっている友人にわざわざマストドンを使ってメッセージを送る必要があるでしょうか?

互換性がなく、共有もダメ、メッセージだけなら他が既にある。見方次第では八方塞がりになりえる危険性を抱えてマストドンはリリースされたことにもなります。

それでもコミュニケーションは進む


特に日本人は流行に敏感で、話題性があれば比較的早く浸透する傾向が強いと思います。このため、おそらく自分の周囲程度の小規模なコミュニティであればすぐに構築できるでしょう。既に構築が済んでいる人もいるかもしれませんね。

Twitterと同じように独り言にも適しているミニブログで、Twitterよりも長文が書ける。インスタンスのおかげで周囲には自然と同じ趣味嗜好を持った人が集まってくる。

そこで被害を被るのはTwitterではない

これを伝えたかったんです。

前述したとおり、Twitterはマストドンとの共存が可能です。そりゃ影響が全くないわけはないですが、それでも影響は軽微といえると思います。

ではどこが割を食うのか、そしてそれはどんな形になるのか。

FacebookとLINEになると僕は思います。

この2つがTwitterと大きく違うところは、会話が1往復で終わらない点です。

長いやり取りをDMとして切り取ったTwitterと違って、LINEもFacebookも会話を主軸においた部分がかなりのウェイトを占めていますよね。LINEなんてむしろそのための専用ツールに余計なオプション盛り盛りにした感じのアプリですしw

となると、そうしたユーザーがマストドンの併用を始めた時、対抗するサービスにとって一番欲しいものが奪われることになります。

それは「利用時間」です。

ユーザーがサービスを利用する時間が減ってしまうとSNSにとって致命的となります。特に月額制の課金モデルを用意していない、いわゆるフリーミアムモデルの場合、サービス内に広告を置いて収益源とすることが多いでしょう。その広告がユーザーの目に留まる機会と頻度が激減したらどうなるか、子供でもわかる引き算です。

※もちろんTwitterもこの影響はモロに受けると思います。が、そもそもTwitterはその特性上「もともと利用時間がそんなに長くない」ユーザーが他のSNSよりも多いと予想しています。なのでどちらかというと、マストドンのせいではなく自身のマネタイズの失策の影響のほうが大きいんじゃないかな、と思います。

違う例を出すと、DuckDuckGoの利用者が増えてGoogleの検索ボリュームが下がるようなものですかね。

もう1つ、SNSではありませんが、もしかしたらマストドンは2ちゃんねるのユーザーも奪うかもしれないとも思っています。

2chに建てられた「スレッド」もしくは「掲示板(板)」1つ1つが、マストドンの「インスタンス」と捉えることができるはずだからです。同じ趣味嗜好を持った人同士が集まる場という意味で、規模こそ違えどユーザーの目的は非常に似通ったものになるのではないでしょうか。

そんな感じ。

2 Comments

てつの

マストドンが面白くもあり危険でもあるのは、個人がインスタンスを運営できる点です。
テクニカルには、マストドンとツイッターの比較がなされることが多いのですが、
いざ運営となった場合、ツイッター社とマストドンのインスタンス管理人のどちらが信用できるかは言うまでもないでしょう。
http://qiita.com/yamashitar/items/25251f7bd2dd2705dbff
マストドンの脆弱性について具体的なことが書かれていますが、
要するに、ID/パスワードを管理する人を、ツイッター社に任せるのか、赤の他人に任せるのかです。
ふつうの人でもよく考えればわかることで、ある程度の実績のある会社、例えばドワンゴならともかく、インターネットの誰かともわからない人に個人情報を預ける気にはならないでしょう。
しかし、現時点では、おもしろいの一点だけでマストドンを使っている人が多く、ひとたび悪用されれば、マストドンという単語=悪、の印象が形成される可能性があります。

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Tom

コメントありがとうございます。
マストドンが若干アングラっぽい臭いがすることは承知しています。が、それも含めてのネットです。
極端な話TwitterだろうがFacebookだろうがGoogleだろうがサーバー管理人の顔を知らない以上安全性に保証などありません。それを承知した上で自己責任で扱うのがネットです。
このインスタンスは危険だと思うなら利用しない、それでいいんです。

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