MVNOを選ぶ前に知っておきたい、「ベストエフォート」の一言に隠された重大なカラクリ

SHARE

MVNOを選ぶ前に知っておきたい、「ベストエフォート」の一言に隠された重大なカラクリ

前回の記事とセットでどうぞ。

簡単に言えば、たとえどんなキャリアであってもLTE回線で下り150Mbpsを実現することは絶対にできません

MVNOだけでなく大手キャリア(MNO)でもできません。

ドコモ、au、ソフトバンク等の大手通信キャリアから通信回線をレンタルし、格安プランで提供してくれる業者があります。

基本的に「通信キャリア」とは2種類存在します。

ドコモやau等、自社で回線そのものを保有している会社を「移動体通信事業者(MNO)」と呼び、そこから回線を借りている会社を「仮想移動体通信事業者(MVNO)」と呼びます。

基本的にどちらの事業者であれ使用する回線自体は一緒なので、当然通信速度の目安も一緒、例としてLTE(Cat.4)なら「下り最大150Mbps/上り最大50Mbps」になります。

MVNOという言葉が注目を浴び出した当初は各社ともホームページの一番目立つ位置にこの速度を記載していたように思いますが、今は隅っこに小さく表示する、あるいは補足みたいな扱いになっていることも少なくありません。

これは「どこを選んでも同じ」だから……ではないんです。厳密にいえばMVNOはMNOと同じ回線を使っていますが、同じ品質を提供することは物理的に不可能です。

通信回線を「借りる」ということ──MVNOの仕組み

冒頭で書いた通り、MVNOとはMNOの持っている回線を借りて運営している事業者のことです。

自社で回線を日本全国に張り巡らせる必要がなく、またそうして作られた膨大な設備を長期間維持するコストも発生しないため、提供プランが非常に割安となるメリットを持ちます。

ドコモ系MVNOならFOMA(3G)、Xi(LTE)回線をそのまま使えるのが特徴です。

ここにほどんとの利用者が騙されます。というと語弊が生じますが、恐らくきちんと理解して契約した人はとても少ないでしょう。

MNOとMVNOの違いはどこにあるのか?ただ単に貸し出しただけなら(通信回線自体が同じなら)、割安で提供される分MNOが無条件で不利になるのではないか?

そんなことは決してありえないのです。

通信回線の仕組みは道路に近い

photo by Ⓒ Andrew A. Shenouda – 2013

通信回線がどのようなものかを考える場合、道路をイメージするのが近いです。

たとえば片道4車線ある国道なら一度に多くの車が通れますよね。これがそのままLTE回線の原理になります。

無線電波を使った通信回線は「周波数」という区切りと、「帯域幅」という幅を持っています。

「周波数」がすなわち「国道○号線」等の道の種類、「帯域幅」が「車線の数」と捉えて良いと思います。

そして通信速度は道路の制限速度と思ってください。下り回線の制限速度は時速150kmの高速道路のようなものです。

速度の求め方

一般的に速度(実測値)を求めるには次の要素が必要です。

  • 端末(CPUまたは内臓モデム)が対応している速度(LTEの場合カテゴリ)
  • 回線の最高速度
  • 回線の混雑具合

道路が150kmまで出せる状態でも、車が100kmまでしか出せないエンジンを積んでいては特徴を活かせません。

また、たとえ制限速度が高くても、渋滞が発生していては車を飛ばせませんよね。

通信回線もこれと一緒です。

たとえ下り150MbpsのLTE回線を掴める場合でも、モデムが150Mbpsに対応していなければ意味がありません。

また回線に対する混雑状況とは「同時接続者数」などとも呼ばれます。要するにその回線を使う端末の数(=ユーザーの数)や、送受信されるデータの容量(道路に置き換えるなら車の大きさ)などです。

大手のLTE回線が遅く、初期のMVNOが比較的高速だったのは混雑状況による影響を多分に受けたものと推測されます。

しかし、MVNOが普及を見せてから結構時間が経った現在、状況は変わってきています。

MVNOも混むようになった

これは単純に「MVNOの利用者が増えた」ためではありません。

MVNO事業者自体も増えており、ユーザーもある程度分散していると考えられるからです。

ではなぜ混雑しているのか?

答えはイメージしてしまえば超簡単、実はMVNOの通信回線は片道4車線もないのです。

画像はイメージです

要するにこういうことです。

冒頭で述べた通り、MVNOとはMNOから回線を「借りて」います。

しかし借りるといっても1本丸ごとレンタルしているわけではないんです。

だって本数でいうなら、例えばドコモは800(900)MHz、1.5GHz、1.7GHz、2.0(2.1)GHzという4本しか持ってないんですよ。

しかもこれらはそれぞれ提供する地域も異なっています。ある場所では800MHzが掴めるけど他の場所では1.5GHzになる、というケースもあります。

特に、下り最高225Mbps等が試験的に提供されてきた1.7GHzは東名坂周辺でしか掴めません。

そんな回線をたとえ1本丸ごと借りれたとしても全国展開なんてできません。

MVNOはMNOが提供する「道(回線)」を部分的に借りて運営しています。ここが話のキモになります。

画像を見てもわかりますよね。MVNOが混雑してきた理由とは、決して利用者が増えたからだけじゃないんです。相対的な話なんです。

あくまでも「道(回線)」自体は同じものを使っているため、最高速度は一緒です。ですがどの事業者がどれだけの「幅」を借りているかはほとんど公表されていません。

単純に考えても、巨額の投資と長い年月をかけて必死で築いた国内インフラを自分たちが使う分よりも多くMVNOに貸し与えるMNOは存在しないはずです。維持費も全部MNO負担のはずですし。

LTE回線を「高速道路」や「国道」に置き換えてイメージする場合、MVNOが借りている部分はその隅に引かれた「自転車専用道路」程度である可能性が高いわけです。

企業努力で改善することはある

たとえば利用者の増加等によって経営が順調なMVNOは、MNOから「追加の幅」をレンタルすることで回線を太くすることがあります。

こうなれば最高速度が同じまま、一度により多くの情報を転送できるようになります。

逆にたとえば常時200Kbps等低速で使い放題プランを提供する場合は狭くてもたいして問題がない場合もあります。

こうした状況を全部ひっくるめて「ベストエフォート」です。「理論上出せる最高速度であり、当社は利用者がこの理想値に近づけるよう努力しています」という意味合いを持つ言葉です。

このため、MVNOの選び方としては次の要素を比べることになります。

  • 通信回線の品質(借りているMNOの種類と回線の種類、LTE対応の有無等)
  • 混雑状況と経営状況の比較(利用者数や知名度の推測と帯域を追加した実績等)
  • サービス内容(プランだけでなく、オプション等も)

auの周波数を掴める端末(=au機)でしか使えないmineoやUQ mobileはその分利用者を限定していることもあり、相対的に混雑が起こりにくい特徴もあるかもしれません。借りている幅にもよりますけどね。

これに関しては厳密には使える周波数もあるため、より詳しくは下記をご覧ください。

【MVNO】ドコモXperiaでmineo(KDDI MVNO)を使う方法

また、これはキャリアを問わず全て共通ですが、たとえ通信速度に制限がない場合でも下り150Mbpsを超える速度を出すことはできません

回線自体がそれ以上の速度でデータを運ぶことができないためです。もっと言えば、ぷららの3Mbpsプランのように事業者が強制的に速度を制限したプラン以外の場合、「速度制限なし」と「下り最高150Mbps」に違いは特に無いはずです。

「容量制限なし」なら話は別です(が、こちらも速度次第でお得になるかどうかが変わってきます)。

余談:「最高速度」は絶対に出せない

これはMVNOだけでなくMNOの場合も同様です。

その回線に定められた最高速度を出すためには次の条件が必須です。

  • 転送の妨げになる要素が一切ない

これを満たすことは物理的に不可能です。

具体的に、無線電波の送受信を妨げる要素は主に次のようなものです。

  • 送受信の両端(端末とサーバー)を結ぶ直線間に存在する障害物
  • 中継器
  • 混雑状況

電波とは直進します。窓ガラス1枚、看板1本であっても直線上に存在する場合、迂回したりぶつからなければなりません。

特に高速通信の需要が高く、各社が積極的に提供を拡大している都会にてこの条件を完璧にクリアすることなど不可能です。屋内で使うならなおさらです。

もう1つの要素、「中継器」とは主に「基地局」のことです。

モバイル端末の発する電波は意外と弱く、数km程度しか届きません。海外に置かれたどころか国内の主要DNSサーバにすら直接到達することはありません。

そこで各社は国中あらゆる場所(電柱等)に中継器を設置しています。これを「基地局」といいます。

それぞれに割り当てられた情報から、三角測量的に位置を割り出すこともできます。

もっと簡単にいえば基地局とは「でかいアンテナ」です。

これら基地局を経由して情報は伝達されるのですが、この時どうしてもタイムラグが発生します。

「端末から最初の基地局まで」、あるいは「基地局から基地局まで」といった限定的な空間であれば最高速度は出るかもしれませんが、「データの送受信」ひとくくりを見た場合、最初から最後まで最高速度で情報が伝達されることはありません。

Wi-Fiの場合もそうです。Wi-Fiの場合の通信速度は「端末からAP(ルーター等)まで」の速度で、その先はブロードバンド回線等の通信速度に依存します。

これも「ベストエフォート」のカラクリです。「どこからどこまで」「どんな影響があるか」を一切無視し、その回線をデータが通った場合の理論値のみを見て最高速度は求められています。

「最低速度」を保証するSDカードのスピードクラスとは真逆になります。

こればっかりはハードウェアでもソフトウェアでもどうしようもないので、極限まで近づけることはできても実現はできないのです。

そして「同時に送受信されるデータ」が複数存在すると、それは渋滞の原因となります。アウトバーンでも大量の車が同時に走行する場合は速度を上げきれないこともあります。

そんな感じ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。