Xperia Z5シリーズ、水中撮影ができない?その真意と「防水」「防塵」規格の基礎知識

画像:Xperia™ Z5 – Our best camera phone - Sony Xperia (Global UK English)
Sony Mobile、Xperia Z5シリーズで水中撮影など行わないよう注意を呼びかけ | juggly.cnSony Mobile、Xperia Z5シリーズで水中撮影など行わないよう注意を呼びかけ | juggly.cn

これまでXperiaは高い防水防塵性能を誇っており、プールで撮影する様子なども積極的にアピールされてきました。

ところがXperia Z5シリーズの注意書きには次のように書かれています。

* The Xperia Z5 is waterproof and protected against dust, so don’t worry if you get caught in the rain or want to wash off dirt under a tap, but remember: all ports and attached covers should be firmly closed. You should not put the device completely underwater or expose it to seawater, salt water, chlorinated water or liquids such as drinks. Abuse and improper use of device will invalidate warranty. The device has Ingress Protection rating IP65/68. For more info see www.sonymobile.com/waterproof. Note the Xperia™ has a capless USB port to connect and charge. The USB port needs to be completely dry before charging.
Xperia™ Z5 – Our best camera phone - Sony Xperia (Global UK English)

とのことで、時代の最先端を突き進むXperiaの先進性に陰りが見えたとか、メッキが剥がれたとか、綻びが生じたと思う方もいるかもしれません。

そんな必要などまったくないということを今回は説明してみます。

防水防塵等級 IPコード とは

保護等級 内容
0級 特に保護がされていない
1級 直径50mm以上の固形物が中に入らない(握りこぶし程度を想定)
2級 直径12.5mm以上の固形物が中に入らない(指程度を想定)
3級 直径2.5mm以上のワイヤーや固形物が中に入らない
4級 直径1mm以上のワイヤーや固形物が中に入らない
5級 有害な影響が発生するほどの粉塵が中に入らない(防塵形)
6級 粉塵が中に入らない(耐塵形)

こちらは防塵を表す等級です。保護されていない製品は基本的に0級となるため7種類存在します。

参考:
電気機械器具の外郭による保護等級 - Wikipedia

※上記記載の防水規格は古いようなので、下記は別の場所より抜粋します。

保護等級 内容
0級 特に保護がされていない
1級 垂直に滴下する水に対して保護されている。(防滴I形)
2級 15°以内で傾斜しても垂直に滴下する水に対して保護されている。(防滴II形)
3級 散水に対して保護されている。(防雨形)
4級 水の飛まつに対して保護されている。(防まつ形)
5級 噴流に対して保護されている。(防噴流形)
6級 暴噴流に対して保護されている。(耐水形)
7級 水に沈めても影響がないように保護されている。(防浸形)
8級 潜水状態での使用に対して保護されている。(水中形)
- 相対湿度90%以上の湿気の中で使用できるもの。(防湿形)

参考:
防水 - Wikipedia

これが防水性能を宣伝する際に必要な等級です。2級など弱いながら多少の耐水性を持つ製品は「防滴」とも表現されることがあります。

これを2つ組み合わせ、「防塵5等級かつ防水8等級」の認定を受けた製品は IP58 と表記できます。

ちなみに防水防塵を示す等級のうち、片方に X が入っている場合、そちら側は省かれています。
IP5Xなら防水性能は不明、IPX8なら防塵性能は不明といった具合です。
ただ、Xperia Z2のように防水と防塵を別々に表記する際にも使われるため、Xが入っているからといって片方の検査を行っていないとは必ずしも言えません。ここには少し注意が必要です。

この等級を見て製品の防水性能を判断する際、最も注意が必要なのは数値ではありません。

防水性能の正確な定義とは

ここでいう「防水」とは常温の水(水道水)のことであり、海水や温水、氷水、塩素を含むプールの水、泥水、飲料(お茶、ジュース、アルコール等不純物の混じったもの)、炭酸や砂糖、洗剤など、水以外の液体に対する保護を一切想定していません

また、防水の最高等級にあたる8級には以下のような特徴があります。

IPX8は「IPX7より厳しい試験条件」という規定があるだけで試験条件は存在しないため、IPX8は実際にはメーカーの独自規格となる。
電気機械器具の外郭による保護等級 - Wikipedia

さらに、噴水(流水)に対する保護等級である5級、6級と、浸水(水たまり)に対する保護等級である7級、8級は試験方法が異なるため、8級がついていても流水に弱い可能性もあるようです。

試験方法に関しては下記に簡単に紹介されていますが企業によって異なる装置を使用している可能性もあります。

IP試験(電気機械器具の外郭による保護等級試験)|信頼性評価試験、故障・良品解析、環境試験|サービス一覧|OKIエンジニアリングIP試験(電気機械器具の外郭による保護等級試験)|信頼性評価試験、故障・良品解析、環境試験|サービス一覧|OKIエンジニアリング

浸水ではなく水蒸気のような飛沫状の水の侵入を防ぐ等級は「9K」とも表されるようです。つまり防水規格IPX/9Kを持たない場合、霧状の水から守ることはできないものと思われます。

Xperia Z5シリーズの防水性能は

画像:Xperia™ Z5 Compact – Sony’s best compact smartphone - Sony Xperia (Global UK English)
Xperia Z5シリーズの防水性能は、

  • Xperia Z5 CompactはIP65/68(参考
  • Xperia Z5はIP68(参考
  • Xperia Z5 PremiumはIP65/68(参考

となっています。(全てグローバルモデル)
※蓋を完全に密閉した状態で、初期不良や経年劣化などが発生していない場合を想定。

IP65とIP68が併記される理由は上で説明したように流水と浸水の両方をカヴァーしていることをアピールするためと思われます。

IPX5に相当する防噴流、IPX8に相当する潜水性能の両方を持っており、かつIP6Xに相当する耐塵系も確保している、という意味ではないでしょうか。

IPX8に対応するため水中に沈めても問題は起きませんが、あくまでも水道水の場合のみです。
海水に含まれる塩分による金属の腐食からの浸水、プールに使われる塩素の影響などは考慮されていません。

またこれと同様に、お風呂など温水環境に沈める、あるいは多湿状態に放置したことによる「結露」の対策も施されていません。

IPX8は独自規格の意味合いが強いとはいえ、IPX7を超える耐浸水を獲得しているはずが、水中に沈めてはいけないとされています。
またそうした場合保証対象外となる可能性も示唆されています。

あくまで個人的な主観ですが、これは「水深1.5mまでの真水(水道水)」に端末を沈めるような場面が日常生活内にほとんど存在しないためではないでしょうか。

バスタブに水を溜める時、お湯側の蛇口をひねらない人はまずいません。
端末を丸洗いする時、1.5mもの深さのある桶を使用することはありません。
学校やレジャー施設に水道水以外を使わないプールというのはありません。

つまり、Xperia Z5シリーズからは「水道水以外の水中撮影」を想定しないよ、と改めて宣言したにすぎません。

Z4以前の端末はどんなケースだろうと水没であれば無条件で無償の修理交換に応じてくれていたんでしょうか?
と考えると、今までと変わらない気もします。

Xperiaの防水性能は高い

Xperia Z2は水深10m以上の海底に6週間放置しても無事動作、防水性能の高さを発揮 - GIGAZINEXperia Z2は水深10m以上の海底に6週間放置しても無事動作、防水性能の高さを発揮 - GIGAZINE

この話題覚えてますか?

Xperia Z2の防水防塵等級は「IPX5/8」「IP5X」です。
等級の説明はSony Mobileのものを引用させていただきます。

IPX5とは、内径6.3㎜の注水ノズルを使用し、約3mの距離から12.5L/分の水を最低3分間注水する条件であらゆる方向から噴流を当てても、通信機器としての機能を有することを意味します。IPX8とは、常温で水道水、かつ静水の水深1.5mのところに携帯電話を沈め、約30分間放置後に取り出したときに通信機器としての機能を有することを意味します。IP5Xとは、粒径75μm以下の塵埃が入った装置に8時間入れて取り出した時に通信機器の機能を有し、かつ安全を維持することを意味します。
Xperia™ Z2 SO-03F | 主な仕様 | ソニーモバイルコミュニケーションズ

Xperia Z5シリーズと同じかたちでZ2の等級を表記するなら、IP55/58となるでしょうか。
Z5シリーズはZ2と比べて防塵性能が上がり、防水性能は据置き、と等級からは読み取ることができます。

ただし(繰り返しになりますが)これはあくまでも水道水に対する耐性であり、それ以外の液体による浸水に関しては今後サポートはしない、と明言されました(グローバルモデルの場合)。

おそらく日本のほとんどのユーザーにとっては関係ない話題

ケータイ補償サービス | お客様サポート | NTTドコモケータイ補償サービス | お客様サポート | NTTドコモ

例えばドコモモデルの場合、ケータイ補償サービスに入っていれば水没時にリフレッシュ品との交換をしてくれます。

さらに、そもそもSIMフリーのハイエンドXperiaが販売されていない日本では、Xperiaのサポートをメーカーに求める機会はほとんどないはずです。
海外からの取り寄せや代理店などから購入した場合であっても、サポートは「販売店」または「販売国のSONY」に求めることになります。
SONYが国内でXperiaを直販していない限り、日本のユーザーが今回の注意書きの影響を受けることはないと思われます。

SONY側の方針に従ってキャリアが規定を変えた場合などは別ですのでそこは注意が必要です。

今回の注意書きに関して詳しいことはわかりませんが、想像するに個人でプールを持つこともあるアメリカ等の国で同様のトラブル(水道水以外の液体による浸水に対する保証要求)が繰り返されており、SONYとして対応方針を厳密にしたいという思いがあったのではないかな?

これに対して日本国内のユーザーが気にかけるべきは保証の有無ではなく、防水防塵の定義です。
水道水しか想定していないため、他の環境で使う時にはこの規格は「目安」以上の意味は持たないことは覚えておいたほうが良いでしょう。

決して海水中で使えないわけではありませんが、その場合防水規格は参考にしかならず絶対とはいえない、ということです。

つまり結論として、変わったのはメーカー直販モデルの保証形態で、決して端末の性能ではないということになります。

リスクを感じる場合は定期的にバックアップを残しておくと良いでしょう。これだって今までと何も変わりません

そんな感じ。

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